金利 vs がん罹患率から、住宅ローン繰り上げ返済を考える

2026年4月の日銀金融政策決定会合が終わり、予想通り利上げは見送りとなりました。私含め、変動金利で住宅ローンを借りている人はホッとしたのではないでしょうか。

とはいえ物価高や円安の対応として、年内に2回、2027年に1回、0.25%の利上げが行われると見る向きが強いです。そうなると、現在0.75%の政策金利は来年には1.5%に。住宅ローン金利も付随して上がっていくでしょう。

以前の記事では、繰り上げを検討しつつ、まずは運用に回すと書いていましたが、その後も継続して、繰り上げ返済について悩んでいます。この悩みを複雑化させる要因のひとつが、“がん団信”。金利+0.1%で、がんと診断されたら残りのローンが免除される、団信のオプションです。

がん家系に生まれ、がんになるのは織り込み済み、問題は”いつなるか・どこがなるか・どのタイミングで見つけられるか”と考えいる私ですが、果たしてこのまま繰り上げをせず、がんを見つける可能性に賭けていいのか、疑念が生じてきました。

そこで思い出したのが、CFPの金融で勉強した、ポートフォリオの期待収益率。がんを見つけるシナリオと、繰り上げ返済するシナリオ、それぞれで期待される収益(ローン残高削減効果)と可能性をかけて、似たような計算ができるのでは、と考えました。

数学の専門家でもなんでもないので、正しいかどうかは分からないですが、以前作った住宅ローン返済額シミュレーションExcelを使って、計算した結果をまとめます。

目次

前提データ

年齢階級別がん罹患リスク

まずは試算に使うデータ集め。年齢層ごとのがん罹患リスクは、公益財団法人がん研究振興財団が毎年刊行している、“がんの統計”、ちょうど4月に2026年版が出ていました。先に2025年版も見つけたので、合わせてご紹介します。

  • 年齢階級別罹患リスク(2026年統計は2021年、2025年は2020年の罹患・死亡データに基づく)
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年齢階級~39歳~49歳~59歳~69歳~79歳生涯
女性2026年2.36.412.721.433.350.8
女性2025年2.26.011.820.131.548.9
前年比+0.1+0.4+0.9+1.3+1.8+1.9
男性2026年1.22.87.520.441.963.3
男性2025年1.22.77.219.840.562.1
前年比0+0.1+0.3+0.6+1.4+1.2
出展:公益財団法人がん研究振興財団 がんの統計 2026/2025
※累積リスクは現在 0 歳の人の将来のリスクを表し、年齢構成(高齢化)の影響を受けない

年齢が低いほど女性の方がリスクが高いですが、男性は高齢化とともにリスクが増し、生涯で見ると女性よりリスクが高いことが分かります。男女問わず、生涯換算で2人に1人、がんに罹患することは同じです。

このデータで驚いたのが2025年から2026年の罹患率の伸びの高さ。2年分しか見ていないので、たまたまかもしれませんが、1年ごとに1.9%上がっていたら、5年後には女性も60%超になるということです。

生活習慣の変化などから、がんになるリスクが高まっているとは良く言われますが、改めて注視すべきデータだと思いました。

期待収益率 計算式

期待収益率は、想定収益率 × 確率 によって算出されます。CFPの勉強でよく出てくるのは下記のような計算です。

景気生起確率株式Aの予想株価
好景気20%2500円
平常50%2100円
不景気30%1800円
※現在の株価は2000円で、購入を検討する

期待収益率 = 500/2000×0.2 + 100/2000×0.5 + (-200)/2000×0.3 = 0.25×0.2+0.05×0.5-0.1×0.3 = 0.045

すなわちこの計算の期待収益率は4.5%です。今回はがん罹患する/しない、繰り上げ返済する/しない、というケースですので、上記のような単純な収益率を出すことはできません。

考え方として、生起確率 = がん罹患リスク、予想株価 = 支払わなくて済むローン残高、と置き換えてみました。

試算ロジック

がん罹患率

前項のように、がん罹患リスクの数字は10年ごとにしかありません。正しく計算するなら、年齢ごとに上がっていくリスクを傾斜に含めなければいけませんが、そんな計算をする頭は持ち合わせてないので、ここはシンプルに、割り算します。

住宅ローンの返済が毎月ですので、年齢階級ごとの増加リスク÷120(10年×12ヶ月)で1ヶ月ごとのリスクを出しました。59歳までは大体1ヶ月+0.06%、~69歳は+0.08%、~79歳は+0.1%ほど、罹患リスクが高まる計算です。

期待される収益額(ローン残高減額効果)

ここでは収益=ローン減額効果。すなわち、マイナスが大きい方が効果が高いことになります。このロジックが100%正しいという自信はないですが、下記のように考えてみました。

A. 繰り上げ返済しない場合

年齢(月単位)のがん罹患リスク × その月の住宅ローン残高

B. 繰り上げ返済する場合

年齢(月単位)のがん罹患リスク × その月の住宅ローン残高(繰り上げ後)+ 繰り上げ返済により圧縮した累積の利息額

繰り上げ返済しようがしまいが、がん罹患リスクは変わりませんので、その数字は一定。大きく変わるのはローン残高で、繰り上げをした分、Bの方が残高が減ります。

ただし、繰り上げをすることにより、ローンの総額は確実に圧縮されるため、Aと比較した場合に“100%確実に減らせる額がある”前提です。

金利1%、1.25%、1.5%で試算結果を比較

前提条件

年齢は49歳(がん罹患リスク6.4%)として、下記条件のローンを契約している前提で試算します。

  • 残高:5,000万円(元利均等)
  • 期間:35年
  • 金利:1%、1.25%、1.5%

繰り上げ返済は、利息の圧縮をすることが目的ですので、その効果が高い期間短縮で行うものとして、月の支払額が繰り上げ前とほぼ同額になる、下記条件で試算します。

  • 繰り上げ返済額:750万円
  • 短縮期間:5年(60ヶ月)

パターン1:金利1.0%

1ヶ月経過後にがん罹患が発覚したパターンから、10年経過ごと、および完済1年前の減額効果を見ていきます。

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年齢金利1%:A. 繰り上げ返済なし金利1%:B. 繰り上げ返済あり+利息削減効果込み
49歳4,988万円 × 6.4% = 319万円4,238万円 × 6.4% + 利息削減 0.9万円 = 271.8万円
59歳3,484万円 × 12.7% = 442万円2,662万円 × 12.7% + 79.1万円 = 417.3万円
69歳1,821万円 × 21.4% = 390万円922万円 × 21.4% + 165.1万円 = 362.3万円
73歳※1,123万円 × 26.1% = 293万円191万円 × 26.1% + 200.9万円 = 250.7万円
※73歳 = 繰り上げ返済パターンの完済1年前

実際には360月分あるデータなのですが、抜き出して比較したところ、繰り上げしない方が圧倒的に有利に見えます。

ただ、ここで忘れてはいけないのが、繰り上げ返済したことによる、ローン総額の圧縮効果。金利1%の場合は、下記です。

Aの返済総額 57,894,840円 – Bの返済総額 (48,051,000円+7,500,000円)=

57,894,840円 – 55,551,000円 = 2,343,840円

すなわち、がんに罹患しない場合、確実に234万円を減額できる、それが繰り上げ返済ありパターン。

繰り上げしない場合は、がん罹患リスクという不確定要素があることを考えると、がん罹患リスクをかけたあとの減額見込みが234万円を下回った月からは、繰り上げしたパターンの方が有利になると考えました。

それを踏まえて、繰り上げ返済なし/あり で減額効果がより大きい月をカウントすると、下記になります。

  • A. 繰り上げ返済なしの減額 > B. ありの減額 → 306/360ヶ月
  • A. 繰り上げ返済なしの減額 < B. ありの減額 → 54/360ヶ月

ということで、25年6ヶ月 vs 4年6ヶ月と、圧倒的にAの繰り上げ返済しないパターンが有利な結果になりました。

パターン2:金利1.25%

同じ計算を、金利が1.25%に挙がったケースで行います。日銀が次回利上げを行うと、恐らく住宅ローン金利もこの程度の上昇になるはず。

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年齢金利1.25%:A. 繰り上げ返済なし金利1.25%:B. 繰り上げ返済あり+利息削減効果込み
49歳4,989万円 × 6.4% = 319万円4,238万円 × 6.4% + 利息削減 0.8万円 = 272.0万円
59歳3,524万円 × 12.7% = 448万円2,694万円 × 12.7% + 99.4万円 = 441.5万円
69歳1,864万円 × 21.4% = 399万円944万円 × 21.4% + 208.7万円 = 410.6万円
73歳※1,155万円 × 26.1% = 301万円197万円 × 26.1% + 254.6万円 = 305.9万円
※73歳 = 繰り上げ返済パターンの完済1年前

利息の負担が増えたことにより、繰り上げ返済のローン総額圧縮効果は高まります。

Aの返済総額 59,985,000円 – Bの返済総額 (49,507,800円+7,500,000円)=

59,985,000円 – 57,007,800円 = -2,977,200円

金利負担が高くなることから、先ほどより均衡する結果が出ました。

  • A. 繰り上げ返済なしの減額 > B. ありの減額 → 157/360ヶ月
  • A. 繰り上げ返済なしの減額 < B. ありの減額 → 203/360ヶ月

1.25%においては、13年1ヶ月 vs 16年11ヶ月と、Bの繰り上げ返済パターンがやや有利な結果となりました。

パターン3:金利1.5%

同じ計算を、金利が1.5%になったケース、すなわち日銀の利上げ2回分の上昇で行います。

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年齢金利1.5%:A. 繰り上げ返済なし金利1.5%:B. 繰り上げ返済あり+利息削減効果込み
49歳4,988万円 × 6.4% = 319万円4,238万円 × 6.4% + 利息削減 0.9万円 = 272.2万円
59歳3,563万円 × 12.7% = 453万円2,725万円 × 12.7% + 119.9万円 = 465.9万円
69歳1,907万円 × 21.4% = 408万円966万円 × 21.4% + 253.1万円 = 459.9万円
73歳※1,187万円 × 26.1% = 309万円202万円 × 26.1% + 309.6万円 = 362.4万円
※73歳 = 繰り上げ返済パターンの完済1年前

利息の負担が増えたことにより、繰り上げ返済のローン総額圧縮効果は、さらに高まります。

Aの返済総額 62,121,600円 – Bの返済総額 (50,991,600円+7,500,000円)=

62,121,600円 – 58,491,600円 = -3,630,000円

また、累積の利息削減効果により、繰り上げ返済をした方が有利になる月が増えています。

  • A. 繰り上げ返済なしの減額 > B. ありの減額 → 94/360ヶ月
  • A. 繰り上げ返済なしの減額 < B. ありの減額 → 266/360ヶ月

1.5%においては、7年10ヶ月 vs 22年2ヶ月と、Bの繰り上げ返済パターンが圧倒的有利な結果となりました。

参考までに金利2.0%では、最初の4年10ヶ月のみがAが有利、残りの25年2ヶ月はBの繰り上げ返済ありが有利となりました。

繰り返しとなりますが、この試算ロジックが正しいかどうか自信はないものの、少なくとも自分自身の方針を決定するには十分なデータでした。最近、繰り上げ返済する方向にかなり傾いていたのですが、この結果を見て、とりあえず日銀が次回利上げを行うまでは様子見で良いかも、と方向転換!

とはいえ、次回の金融政策決定会合は6月。たった2ヶ月ですので、ある程度の資金は流動性の高い短期の定期預金などで置いておこうかと思います。最近はキャンペーンで、金利1%程度の定期預金もありますからね

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