ヴィリニュス、カウナスはリトアニアの世界文化遺産ですが、今回ご紹介する十字架の丘は世界遺産ではなく、UNESCOの無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)である、“Cross-crafting and its Symbolism(十字架の手工芸とその象徴)”を代表する場所です。
無形文化遺産、世界遺産検定を受けたことがある方にはおなじみですが、世界遺産ほど一般の方には知られていないかと思います。日本でも能や歌舞伎などの芸能、なまはげや屋台行事などの祭り、和紙や結城紬などの伝統工芸から和食まで、実にさまざまな無形文化遺産が登録されており、その国の残すべき伝統文化や技術という意味合いです。
最近SNSで多く取り上げられ、リトアニアいちの映えスポットとして有名な十字架の丘ですが、その真髄は場所そのものではなく、十字架が象徴するリトアニアの人々の信仰と文化ということかもしれません。
リトアニア・シャウレイ 十字架の丘
場所と行き方
十字架の丘はリトアニア第4の都市、シャウレイの北側にあります。Googleマップで見ていただくと分かりますが、何もない草原地帯というか農地というか、見渡す限りの原っぱみたいな場所。
位置的にはラトビアの首都リガと、リトアニアの首都ヴィリニュスの間ながら、リガからの方が遥かに近い。もともとは自力で移動しながら寄ることを考え、経験者のブログなども読んだのですが、公共交通機関の乗り継ぎ待ちや荷物のことも考え、リガ発の半日ツアーに参加することにしました。
この判断が、結果的には非常に正解でした!詳しくは後ほどご説明します。
歴史
この場所に十字架が建てられ始めたのは、200年ほど前らしいです。十字架づくりが禁止されたロシア帝国時代や、旧ソ連の支配時代などに何度も破壊されたこともあるらしい。ツアーにして良かったと思ったのは、道中でラトビア人ガイドの若者が、バルト三国独立に向けた運動、”人間の鎖”のことや、十字架の丘の背景などを詳しく説明してくれたから。
自力で来たら、ただ十字架を眺めて写真を撮って終わっていただろう場所が、リトアニアの人々にとってどのように重要なものなのか、理解を深めることができました。
この土地が誰の物でもないという話も驚きでしたし、独立後の1993年にローマ教皇ヨハネ・パウロ二世が訪れたことで、この場所がリトアニアのカトリック教徒にとって聖地のような場所になったという話も、国は違えど近い歴史的背景を持つラトビア人ガイドから聞くことで身近に感じられ、ラトビア&リトアニアで一番の学びの機会になりました。
ツアー詳細
では具体的なツアーの詳細について。GETYOURGUIDEで事前に予約していましたが、段々価格が安くなっていったので、何度か取り直して最終的には$45.69。その時のレートで7,000円弱です。
ダウガヴァ川右岸、占領博物館前の広めの道路に集合です。なんとこの日はミニバス3台の大所帯でした。途中リガのオススメ観光スポット解説や、昔の国境の位置などに触れながら、現在の国境を超える地点で降りて写真撮影。車窓は基本森です。


片道2時間以上のバスの旅なので、途中トイレ休憩も挟みながら、いよいよ十字架の丘へ到着です。ホントに、周りに何もない!入口でガイドさんから最後の説明を聞いたり、十字架を立てたい人はお土産物屋で購入したり。日本から来た仏教徒である私は、ここに自分が十字架を立てることのナンセンスさを理解しているので、土産物屋はスルー。
宗教的な意味のある場所ですが、だからこそなのか、物乞いが禁じられています。火気、犬の散歩もNG。
また、入口ゲートで見つけた気になるホタテ貝マーク。これは世界遺産にもなっている、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路のマークですね!調べたところ、リトアニアにもカミーノ・リトアノ(Camino Lituano)と呼ばれる巡礼路があり、十字架の丘はそのハイライトのようです。確かに、巡礼路にふさわしい。


ゲートをくぐり丘へ向かいます。写真でよく見る十字架びっしりエリアは、意外と小さいです。まさに十字架の小山という雰囲気。ただ、その周囲の平地を含め、草原の道沿いにも十字架が並び、丘を超えた先にもまた十字架が並び、エリア一帯に、“民よ、好きなところに十字架をお立て”感が溢れています。
下の写真に見える赤い屋根は、休憩所のように見えて礼拝所です。ヨハネ・パウロ二世がこちらでミサを行ったそう。


そしてついに来ました、この象徴的な場所!この手前にあるキリストの十字架も、ヨハネ・パウロ二世が来た記念のもので、教皇の言葉が刻まれています。石で並べられた十字架もあって、人々がこの場所を大事に思っている様子が伝わります。


丘に突入する前に周囲も散策。とにかく本当におびただしい数の十字架。ガイドの若者がざっくりの数(数十万とか?)も言ってましたが、日々増えていくので到底数えられないよね。



小山の中に分け入ります。ひとつひとつ、表情の違う十字架に思わず見入ってしまう。



小山を抜けて、やや余裕のある並びの十字架を通り過ぎ、先の建物へ向かいます。教会かと思ったら修道院のようです。中で集会のようなものが開かれていたので、入口から覗かせていただきました。ステンドグラスの下、十字架の丘が見えます。



十字架の丘の裏側や、横から見ると、なにもない原っぱに十字架感が際立ちます。この場所の自然の豊かさがまた、自分や神と向き合って信仰を深めるのに良いのかもしれないですね。


あっという間に集合時間となってしまいました。この原っぱに生えている野草がまた美しい!
そして最後に突然トイレの写真を出しますが、ツアー参加前、”必ずユーロコインを持ってきてね、トイレに必要だから!”と注意を受けていました。確かに、ヨーロッパでは小銭がないと公衆トイレに入れないという経験は普通。コインを切らさない、は旅行中気をつけるポイントです。
が、なんとこの十字架の丘では、トイレの入口システムすら、クレジットカードのタッチ決済が導入されていました。さすが人気観光地!欧米のキャッシュレス導入状況を見て、日本の後進国ぶりを悟る、というのがこの旅を通じた実体験でしたが、1ユーロすらもはや小銭なしでも安心です!


ラトビア・リトアニアの旅を振り返って
帰り道では、ラトビアのエルガワという小さな街にも寄りました。その街で、ラトビアにロシア語話者とそれ以外の住民で隔たりがあることも知りました。他にも、このツアーの道中に聞いたガイドの若者の話はしっかりと記憶に残っています。例えば、”自分たちは小さな国だから、小さな勝利でも超お祝いする。アイスホッケーの世界大会でラトビアがアメリカに勝った。ちょうど日曜日で国民皆で狂喜乱舞し、大統領が宣言して翌日休みになった!”というような話です。ほっこりしました笑
また大統領について、”彼はサイクリストだから、良くあの辺を自転車で走ってるよ”というような話も。国のトップの身近さたるや。ガイドの彼の”small country”という言葉が、苦労して独立を勝ち取った国の誇りや自国愛に溢れた表現に思えて、羨ましさを感じました。
一方で、EUに加盟したことによりラトビアとリトアニアからは、かなりの数の住民がより収入の高い他のEU諸国に流出しているとのこと。私自身、他のヨーロッパに比べてコスパが神!と思ったことも確かですが、小さくても素敵な国なので、しっかりと経済力をつけて発展していってほしいと願います。もちろん、隣国に怯えることなく。
ホントに楽しくて学びになるツアーでした。十字架の丘に行かれる際は、ツアーが断然オススメです!
またブログを書くにあたっては、リトアニアの世界遺産、無形文化遺産や独立運動などの情報について、リトアニア大使館の情報が分かりやすくて参考になりました
そして、7月に万博に行ったときには”地味・・”としか思わなかったラトビア・リトアニア館の展示が、この2国の訪問を経て、俄然腑に落ちました。豊かな森と自然が、国のベースにあるからこその展示だったのだなと。いつの日かまた訪問する日まで、歴史や文化を学び続けようと思います!

